能が舞台のコミック☆夭折の漫画家「花郁悠紀子」作”不死の花”今読んでも、うっとり泣いちゃうんです…。

画像さて、先日の能楽鑑賞で、またお能熱が上がったせいか、
思い出してしまいました
花郁悠紀子さま。
実は、1980年にすでに他界されている、夭折の少女コミック作家さんです。
彼女の描くコミックスは繊細で儚げで、優しげでロマンチックで…
夢見るような、いつも風に長い髪をなびかせた幸薄そうな儚げな少女や少年が淡い恋をしては、消えてゆくような
そんな切なさと、甘さが流れるような優しいタッチの絵で綴られた、それはそれは美しい物語でした
わたしは、大昔から彼女のコミックが大好きでしたが特に、
金沢出身の彼女の和風なテイストに強く惹かれました~

その中でも、、遺作、と申しますか。。死後にご遺族でまとめられた短編集。
「幻の花恋」の中に収録された「不死の花」(できれば”ふじのはな”と読んでください)が、わたしの大好きな能楽の物語でございまして。
特に、女性との恋愛のない限りなく……
いいえ、もうほとんどBLテイストな切ない美しい夢物語なのでございます

画像さて、物語は能楽師 錦木万里(まさと)は、宗家である父から、次期能演「藤」のシテ方(主役)を譲られたのです。
自分の舞いに迷いのある万里は、息抜きの旅に出てふと足を向けた藤妙寺という寺。
その寺で菩薩像を見た帰り、万里は崖から足をすべらせ、気がついた時には彼は
世阿弥の息子、観世元雅になっていた…。
そこで藤若の名を付けられた申楽師の少年と出会う…。


少年は鬼夜叉丸と言い、旅の一座のものでしたが、
世を儚んで、今にも自害しようとしていたところを世阿弥に助けられたのです。
さて世阿弥と言えば、BLの祖
しかし、将軍義満を魅了した美貌も今はなく、年老いて時の将軍義持からは
疎まれて、今はむかしの勢いもない様子です~。
しかし、世阿弥鬼夜叉丸を哀れんで慰め、
そして自身が昔、同じ幼名鬼夜叉丸で、あったところを
先の関白二条良基様より藤若丸の、名を賜ったことから
少年にその名をあたえ「今はただ、生きよ。」と、励まして別れたのでございます。

そして、元雅である(万里)は、不遇をかこつ世阿弥に対して
敬愛するが故に今の状況に対して、何もしようとしない父親にたいする不満を胸にくすぶらせている。
そんなある日、知り合いの貴人の家で偶然にすぐる日の藤若丸
と再開したのでございます。旧交を温める二人。
でも、ふとしたことばの端に藤若丸が父である世阿弥を
慕っているとほの窺って、和えかなる嫉妬を感じるのですが、その嫉妬心をたくみに
父に対する現況への不満とすり変えていく自分には気付いていません。。


元雅は父親が大好きで、でも、長男の立場から面と向かって言えない。
その父親が心に掛け、また素直に父親を慕ってみせる藤若丸が、
愛しいやら、うらやましいやら…

いつの間にか藤若丸に惹かれている元雅

一方、貴族に引き取られた藤若丸は偶然、主人の館で母親のであるべき男に出会ってしまい………
         

画像画像


藤若は母の敵討ちに失敗し、追い詰められての根元であえなく自害して果てました。。




藤若丸の亡骸を抱き、初めて己の恋心を自覚した元雅……



(なんという、美しいシーンでしょう。このコミックの出版から28年…。いまだに、この美しさに勝る情景を見た覚えがございません。)



画像




夢から醒めた、万里、、元雅のときの記憶のままに走り行く先に、件の藤の花が…   


藤よ………藤よ

そこにいるのか─────


藤に愛でられるように   花とひとつになっていたと


松の大樹は今はすでに枯れた………


だが見よ   その松の枝にかかる藤が こうもみごとに枝をはる……






このコミックスを手に取った時には、私か迂闊にも花郁さんの死を知らなかったのです。

美しい、お話にため息をつきつつ読み終えた、その後書きで…
青池さんや萩尾望都さん、佐藤史生さんのコメントを読んで、、、
すさまじい衝撃を受けました。花郁さんは、「アナスタシア」シリーズのころから大好きだったし。
コミックスはほとんど持っていたと思います。

後書きにある萩尾さんのお話しに、花郁さんのお母様のお話が載っていまして。

「”次に、こう言う話が書きたいのよ”」と、ベッドで言われていたそうです。
「伝説の妖獣を捜し求めた少女が、実は自分字自身が伝説の妖獣だったと気付き、光まばゆく天に昇っていく話」だったそうです。
「その話を聞いたら、天に昇っていくなんて、何だかあのこの運命と符合するようでつらくて、
昔から、あの子は天馬が空を駆け上って行く絵とか描いていて…きれいな、ふわ~っとした物が好きだったんですよ」
と、話されていたそうです。。。。





薄幸の少年藤若。。
そして、万里が成り代わった元雅も実は、その才能を十分に認められながらも、若くして客死したと伝わっています。

念を抱えて夭折した二人の主人公達に、花郁さんはどのような思いを託されていたのでしょう?

たとえ、一時の花の時期は儚く過ぎ去っても、
長く永劫に花を咲かせ続ける藤のように、あるいは能楽に
あるいは、能のなかに秘められた世阿弥や昔語りの作者達に永遠の息吹を託したのでしょうか?




遺作にしては、あまりにも美しい。あまりにも悲しい。
あまりにも花郁さんらしい、物語に20数年たった今でも、読み返し涙がにじんでしまうのをこらえられません。

画像なを、「不死の花」が含まれたコミックス「幻の花恋」はすでに絶版になっており。
只今は、文庫本として「白木蓮(マグノリア)抄 (秋田文庫) (文庫) 」の中に、編集され復刻されているようです。


良く似た作風の少女漫画家波津 彬子さんが妹さんだということも、以前にこのブログで花郁さんのことを書きましたときにみなさんのコメントで知りました。

花郁さんのことを、ご存知の方がたくさんいらしてすごくうれしかったです。

お友達のゆのさんには、先日強引に文庫本をプレゼントして引きこんでしまいました~。

古い奴だと、お思いでしょうが~~。。古いものもなかなか良いものです

そうそ、能を見て思い出した、と、書きました。花郁さんの作品には
能に影響をいうけたものが他にもあるんですよ~。
「幻の花恋」は特に、その特色が良く出たコミックスでした。
機会があれば、手にとっていただければうれしいです~~。



観世元雅世阿弥(観世元清の長男)
三十代の若さで巡業先の伊勢安濃津で急死した。
彼が南朝系に近かったとし、政治的対立に巻き込まれて暗殺されたとする説もあるが詳しくは不詳。
若年ながら世阿弥をして「子ながらも類なき達人」「祖父にも越えたる堪能」と絶賛され、
「道の秘伝・奥義ことごとく記し伝へつる」[1]「道の奥義を極め尽くす」[2]最良の後継者であった。
白木蓮(マグノリア)抄 (秋田文庫)

この記事へのコメント

china
2008年05月27日 17:14
poppy様こんにちは~。
昔の漫画は濃いですよね。一本一本の線にも愛情が込められてる
感じがして。トーンもあまりなかった時代に一条ゆかり様が大先生
のところで衝撃を受けたなんて事も今の時代じゃ笑い話です。
和服好きのpoppyさんは、渡辺多恵子さんの『風光る』を読んだ事
ありますか?。少女漫画なのですが新撰組が舞台なのでBLチックで
面白いんですよ!。和物好きの方なので丁寧な描き込みです。

そうですね。老若男女を問わずフランクな方は知識も豊富で学ぶ
所が多いですよね~あるおばあさんが1日に最低5人の話を聞き
なさい。って言葉は年を重ねたから気づくものだなぁ~と
実感しています。自分一人の経験なんてたかが知れてますもん。
2008年05月27日 18:14
poppy-23様☆こんにちは♪

この記事を読みながらまた思い出し涙してしまいました
私が頂いたのは『四季つづり』でしたね
あのお話の中にも黒い神の化身、羅睺(らこう)という神馬のお話や、やはり満開の花のなかで息絶えた薄幸の少年
どの作品を読んでも涙せずにはいられませんでした
各編必ず『死』というテーマが織り込まれているのですが
その『死』それぞれが儚く切ないのですよね
そしてこの、藤若丸の亡骸を抱く元雅のシーン
当時、CGもなく全て手作業で描かれたのだと思いますが
みごとです・・・゚+.(*ノェノ)゚+.

偶然にもワタシは妹である波津様の作品に魅かれたのもきっと何かのご縁、と思っています
素敵な作品のご紹介をありがとうございました
ちゃとら☆
2008年05月27日 20:04
poppyサマ、こんばんは!!

うわ、知らない漫画です~ッ。
>1980年にすでに他界されている
そうだったのですか・・・。
その頃はまだこの様な漫画を読む年齢ではなかったので・・・機会があったら是非読んでみたいです!!

能を題材にした漫画といえば・・・成田美奈子先生のコミックスを買ってます!!
(漫画の内容よりも、お能の解説が勉強になるので・・・)
能や歌舞伎、浄瑠璃、狂言・・・一通り観に行ったことありますが、何を見たのか覚えていません。(汗
(場所は・・・国立劇場・・・だったかな?)
前の記事で書かれていた「住吉能」・・・素晴らしかったでしょうね。
あの記事を読んだら、なんだか行ってみたくなりました。
2008年05月27日 20:48
poppy-23様☆こんばんわ☆
昔の作家さんは本当に惹かれる方が多く居ます。
花郁悠紀子様は意識せず読んでいたかも知れませんが、あの時代の方の絵を見るとホッとします。
青池さんが親しかったのも存じ上げています。
china様☆がおっしゃるように昔の漫画さんはあんまりトーンに頼ってなかったですよね。種類も豊富じゃなかったし、高価だった。
自分で全部描いていた。私はその技法にも下手くそながら惹かれます。
やはり昭和の漫画家さん一味も二味も違います。。。
2008年05月28日 01:41
chinaさま☆こんばんは。
そうですね。たしか花郁さんも、点描の絵をご自分で描いていらしたと、坂田さんの本かなんかで読みました。昔は当たり前でしたよね。
大島弓子さんとか、綺麗でした~。
>渡辺多恵子さんの『風光る』を読んだ事ありますか?
新撰組大好きなんですけど、この本は書店で立ち読みしましたが、絵が可愛すぎる上に、男装して新撰組って言うシチュが苦手で~。
すみません。少女漫画ではよくありますよね。新撰組も30年以上ファンですが、木原敏江さんとかけっこう男装して…ってお話もよくありますよね。そう言えば、木原さん世阿弥のコミックかいてましたね。
あの方のストーリーはいいんですが、女の子キャラとヒラヒラした衣装が苦手で~。(フィリップは好きです~)
う~~ん。わがままですみません。
>あるおばあさんが1日に最低5人の話を聞きなさい。
家にこもって主婦やってると、一日に5人と話すなんて、けっこう至難の業ですね~。今はネットでブログとか読めるし。助かってます。
ブログでみなさんのお話を読むのが一番の楽しみです^-^)!
2008年05月28日 01:48
ゆのさま☆いつもコメントありがとうございます。
すみません。強引に巻き込んでしまって。でも、きっとゆのさんなら好きになってくれると思って~。それに、何となくイメージが似てるんですよね。ゆのさんと花郁さんって~。
>やはり満開の花のなかで息絶えた薄幸の少年
そうですね~。きれいでしたね。あれの一面の花だらけの絵もすごかったですよね。花郁さん、ちょっと人物のデッサンがやばいところがあるのに、花鳥風月のモチーフとかすごく上手で綺麗でしたよね。
>各編必ず『死』というテーマが織り込まれているのですが
当時の少女漫画では「死」=「美」的なイメージで、、薄幸の主人公の清い死を強烈なアコガレで見ていた記憶があります。
今のBLは基本、死に花NGなので年取って読んでる文には気が楽ですが、当時の夢に恋をしているようだった気持ちも好きでした~。
波津さん、何度もいいますがBL描いてほし~。
2008年05月28日 01:59
ちゃとら☆さま★コメントありがとうございます。
>はまだこの様な漫画を読む年齢ではなかったので・
どへへへ。おばちゃん、ちゃとら☆さんが生れる前から腐ってたかもしれません。こんなおばちゃんに付き合ってくださってありがとう。
本当に昔の漫画家さんは情熱と努力で自力で素晴らしい漫画を描いていらっしゃいました。萩尾望都さんの若い頃の作品も素晴らしいです~。
>能を題材にした漫画といえば・・・成田美奈子先生の
書店で見たのですが、ちょっと絵がかわいすぎて~(^-^;)。
我がままな奴で、すみません~。(狭い世界に生きてます)
>能や歌舞伎、浄瑠璃、狂言・・・一通り観に行ったことありますが
すごい!ちゃとらさん勉強家なんですね。行動力も素晴らしいです。
わたしは歌舞伎はまだ見たことないです。玉三郎とか、見たいな~!
今年は、たしかに源氏物語千年紀らしくって「あさきゆめみし」の豪華版出版や、能楽でも「源氏物語」系の演能が多いようです。
機会があったて、見に行かれたら、ぜひお話を聞かせてください!
2008年05月28日 02:06
れいレイさま★こんばんは。コメントありがとうございます。
>青池さんが親しかったのも存じ上げています。
そうでした!れいさま青池保子さん大ファンですもんね。わたしも青池さん大好き!「兄弟仁義」では共著してましたよね~。
本当に、あの当時の漫画を読むとホッとします。
絵やストーリーが肌に馴染むというか?脳細胞にノスタルジーが滲み込むと言うか?(意味不明?)血液中に漫画血球が流れている気がする。
>自分で全部描いていた。私はその技法にも
手書きの丁寧さと言うか、暖かさのようなものがありました。
大島弓子さん。萩尾望都さん、佐藤史生さん~。儚いイメージのファンタジー点描の世界がすごかったです。当時は、自分で点々描くのが普通でしたよね。実は、わたしも当時は下手ながら自分で点々画を描いていました。あの美しさは憧れました~。レイ様もがんばって~!
ゆの
2008年05月28日 03:56
poppy-23様☆こんばんは♪

波津様の『幽霊宿の主人』の中に
昔、悲恋の末孤独の死を遂げた少年(小姓)の亡骸が萩の花に守られ長い年月を経て、やっとその存在を人に知られることができた時、静かに成仏し亡骸が儚く消えていくシーンがありました
お姉様の儚さ、そして波津様の不思議な世界がコラボ、そんな作品でした
2008年05月28日 13:22
ゆのさま★こんにちは。
波津さんの作品、少女コミックを読んでいたときは結構好きで読んでいたのですが、最近はご無沙汰しています。
BLチックな悲しくて切ないお話ですね。その小姓の例ではないですが、
こうやって、たまに花郁さんのお話など蒸し返して懐かしんだりすることで、花郁さんと言う作家さんがいらしたと。少しでも多くの人に覚えていてもらえたら、わたしの最高の喜びです。
るる
2008年05月28日 15:56
こんにちは☆
これ私も読みました。
全くどこまで好みが似ているんでしょうね(苦笑)
いえ、逃げないでくださいね(笑)
いつも儚げな絵は学生時代衝撃的で
その作家が他界していると知ったときも何となく頷けました。
トーンってやっぱりなかったですよね。
ペンで一本一本アミ描いた記憶が!(笑)
その割には私は上達しない絵です(涙)
2008年05月28日 21:53
ああ~美しい絵でございます~
僕の絵は邪心に満ちています~(>_<)

こんなに繊細に描けたら・・いいのに・・

漫画家さんは僕も知っていますが早く
亡くなられる方が多いですね・・なぜ?
2008年05月29日 13:42
るるさま★こんにちは。
るるsunも、花郁さんコミックス読みましたか!?うれしい。
本当に、好みがかぶってますね。逃げませんとも。
擦り寄っていっちゃいますってば。(^-^)
>いつも儚げな絵は学生時代衝撃的で
るるさんがお読みになったときは、すでに他界されていたのですね。
私は「アナスタシアとおとなり」とか、けっこう生前のときからファンで就職してしばらく遠ざかっていて、久しぶりに買ったコミックスでご他界のことを知ったので、ものすごいショックでした~。
>ペンで一本一本アミ描いた記憶が!(笑)
わたしも、やりましたよ~。あっデザイン学校時代に、点々画も描かされましたね。だからあれが当然だとおもってました。
るるさんも、目の細かい書込みとかすごくこだわってますよね。
2008年05月29日 13:44
ペンタマンさん☆コメントありがとうございます。
いえいえ、ヨコシマな気持ちがあるのはわたしもです~~。
あんなに、清楚で清らかで美しいコミックでも妄想の中では……。
ペンタマンさんも、細やかな筆使い、素晴らしいタッチをお持ちです。
漫画家さんが早世されるケースが多いのでしょうか?
やっぱ不健康な生活なんでしょうか?いや、良い人は
惜しまれるんでしょうね。私なんかはびこってます~。

この記事へのトラックバック

  • エアマックス 95

    Excerpt: 能が舞台のコミック☆夭折の漫画家「花郁悠紀子」作”不死の花”今読んでも、うっとり泣いちゃうんです…。 KC Poppy-23★秘密の花園/ウェブリブログ Weblog: エアマックス 95 racked: 2013-07-10 05:50